より効果的な遠距離交信
魔法を生み出そう。

東の王から「横山商会の技術で、気軽に情報の交信ができるような道具を作れないか?」という依頼があった。
そこで、交信魔法を道具に付与することを考えた。

道具に魔法を付与すると言っても、「道具は持ち運びが容易にできるくらい小さなもの」「付与された魔法の効果が普通に詠唱したとき同様、正確であること」など、様々な制約が生じる。

パーティ一で力を合わせて
さまざまな失敗を繰り返し、

ようやく小さな容器に
効果の高い魔法を付与することに
成功した。

長距離無線通信モジュール
「OZV3」開発

そもそも
「無線通信モジュール」って?

いまや当たり前となったIoT(Internet of Things)という言葉。そのIoTの根幹を支えるのが通信機能です。「無線通信モジュール」とは、簡潔に表現すると、その名の通り、「通信機能のない機器に、無線通信機能を付与できる部品」のことです。
当社では、かねてから、IoT時代の到来を予期して、10数年来、自社のオリジナル無線モジュール、「OZV」シリーズの開発に取り組んできました。
今回、最新モデル「OZV3」の開発プロジェクトを紹介します。

新型OZVの開発スタート

これまで当社では、無線通信モジュールとして、2.4GHz無線通信モジュール「OZV 2.4」、920MHz無線通信モジュール「OZV 920」を開発してきましたが、無線通信の命ともいえる、通信距離が短い点に課題がありました。
そのような中で、長距離通信可能な変調方式の電子部品(IC)が登場しました。この電子部品を活用すれば、従来のOZVが抱えていた一番の弱点である、「通信距離の課題」を大きくクリアできることが判明し、新たなOZVの開発がスタートしました。

最大の壁は認証

当初、開発に携わった社員たちは、これまで自社で培った無線モジュール開発の技術を活用すれば、新型OZVがリリースされるまで、さほど時間はかからないと考えていました。しかし、新しいICを組み込んだことで大きな壁が立ちはだかります。
その壁が、「工事設計認証」の取得でした。無線の電波を出す製品は、認証機関から電波を発信する装置製作の認可を得る必要があります。この認可がないまま無線機を開発し、販売すると、違法となります。
当然、これまでのOZV開発中にも、工事設計認証の取得の実績はありました。しかし、今回の変調方式の電子部品に関連する認証取得は当社でも初めての試みでした。認証を得るためには、様々な試験をクリアする必要がありますが、そもそもどのような試験を実施するのか、また、そのテストに対応するための準備も大変でした。

壁を超えるキーポイントは、
これまで培った技術+連携力

ようやく準備が整った中で、テスト中に不要輻射(設定している周波数以外の周波数をもった電波)が発生していることが判明しました。不要輻射を抑えるためには、「回路定数(回路を構成する抵抗値やキャパシタンス値等のこと)」を最適な状態にする必要があります。
回路設計を担当しているハード設計スタッフたちは、回路に使用されている部品を変更する等、何度も事前のテストを行いました。
さらに、ICのレジスタ(周波数の値、電波の強さ等を記憶する箇所)設定も困難を極めました。適切な設定を行わないと規定以上の出力になり、工事設計認証の取得が出来ません。最適な設定を行うため、ソフト設計スタッフは、ICメーカーへの問い合わせや、データシートを何度も確認する等、設定値を変更しながら事前テストを行いました。
また、不要輻射は回路定数とICレジスタが相互に関連しあっている点もあるため、ハード、ソフトそれぞれの設計スタッフ同士で連日打合せやその打ち合わせを実機に落とし込んでテストが行われました。

認証取得とリリース、新たな挑戦へ

苦労の末、ようやく、認証がおりました。早速、出来上がったばかりのOZV3をもって通信距離の測定にいきました。行先は内灘公園。徐々に通信距離を伸ばしていき。最終的に、羽咋方面の海岸線で10kmまでの通信を確認することができました。従来のOZVの通信距離である1km強をはるかに超える通信距離を達成することができました。
厳しい困難をスタッフの連携やこれまでの培った技術力で乗り越えて完成したOZV3。おかげさまで、当社営業部門のPRの甲斐あって累計1万以上の製品に使用されています。
そんなOZV3を使用した製品の中でも、特に多くの受注を頂いているのが、呼び出しシステム。本システムは、企画-開発-生産までを当社と当社グループ会社である朝日電機製作所が一貫して手掛けており、レストランやフードコート等の飲食店、病院の受付、市場等様々な場所で利用されています。OZV3は、その他、建設や土木作業員の方々の体調管理、酪農関連の分野等、様々な場所で利用されています。
OZV3の開発に喜ぶのも束の間、次への挑戦も始まっています。OZV4の開発もさることながら、現在は、主に電池不要の通信モジュール開発に注力しています。開発部門は、これからもお客様の独自のリクエストに応えられるよう「さすが横山」を目指していきます。

※呼び出しシステムについては、お客様の株式会社エコー総合企画様ご参照。
https://echo5555.co.jp/products/remote.php